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2021年1月29日 石井宏樹/トルコ語経済記事翻訳者

2021年トルコ市場展望

2021年のトルコの市場カレンダーが明らかになった。 各種機関からの発信なども見ながら、2021年のトルコ市場の展望を見ていきたい。

2021年1月21日、欧州中央銀行(ECB)は政策金利の据え置きを発表した。同銀によると、政策金利は0%、預金金利は0.5%、限界利子率(Marginal Funding Rate)は0.25%として従来通り維持される。ECBからの一連の金利政策に関する発表を受け、トルコ中央銀行も同日に自国の政策金利据え置きを決定した。昨年9月時点では8.25%であったものが順次引き上げられ、現在では17%となっている。

トルコ市場については企業業績が回復しており、昨年第二四半期(2020年4-6月)のような最悪期を脱している。(1月21日中央銀行アーバル総裁談)一方で、足元ではインフレ、若年失業率の高止まりなど社会不安が増大しつつあり、予断を許さない状況が続く。昨年11月来の政策金利の引き上げ・維持政策は当面続だろう。主要輸出先である欧州市場の混迷も増し、業種などによっては悪影響が長期化することも想定される。

現在のトルコが国を挙げて推進しているのはワクチン接種である。トルコにとって頼みの綱は旺盛な内需と経済成長であった。同国においては過去20年来、消費と建設業に重きを置いた経済政策が取られてきたため、若年層の経済活動を制限する外出制限の継続は大きな足枷となる。消費や経済活動が抑制される状況が続けば、インフレや物価高の進展に拍車がかかり、先行き不安と失業率の上昇という負のスパイラルから抜け出す事ができないだろう。

今年のトルコ経済の最初のヤマは3月18日~4月15日頃ではないかと筆者は見ている。この時期にはトルコ中銀の政策金利会合が予定されている。過去数ヶ月に渡って比較的安定していたリラであるが、基本的には主要先進国市場の様子見という様相が強かったように思う。昨年来の諸外国との対立や紛争は解消していないことから、それらが突如として火を吹き、トルコ市場を吹き荒れる可能性は依然燻っている。今年もトルコ市場の動向から目を離せない状況が続くだろう。

(Note)ECB 市中銀行支援策の継続を発表

ECB(欧州中央銀行)はパンデミック緊急購買促進プログラム(PEPP)というものを導入している。この政策は2020年3月に導入されたもので、新型コロナ対策として市中銀行に大量の資金を供給する。当初の資金供給額は7500億ユーロであったが、昨年12月10日の発表では供給資金額総額1兆8500億ユーロ、プログラムの実施期間も9ヶ月延長して2022年3月末までとした。

同銀のラガルド総裁は12月10日の会見で必ずしも全額使い切る必要はないとコメントしていたが、その後状況は再び流動化しつつある。英国での変異種拡大に加え、コロナの第三波が世界市場を席巻しており、財政出動の「裾野」が広がっていく状況は変わらないだろう。

(参考記事)

  • Ekonomist紙電子版(2021年1月10日発行)
    “2021’in veri takvimi piyasalari nasil etkiler? (2021年のカレンダーは市場にどの様に影響するか?)”
  • Ekonomist紙電子版(2021年1月21日発行)
    “https://www.ekonomist.com.tr/dunya/avrupa-merkez-bankasinin-faiz-karari-belli-oldu.html (欧州中央銀行の政策決定が明らかに)”
  • イスタンブール商工会議所HP “https://www.itohaber.com/haber/guncel/214424/merkez_bankasi_politika_faizini_yuzde_17_de_sabit_birakti.html (トルコ中央銀行政策金利を17%で維持)”
  • 欧州中央銀行HP (https://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/pepp/html/index.en.html)